ベトナム釣行記「再び日本釣行」 

2016年7月下旬

ベトナムの生活ではいろいろな不都合をストレスとして感じることが多く、その一つが体調管理の難しさである。しょっちゅうお腹の調子が悪くなり、下痢、嘔吐、発熱の三点セットは日常茶飯事。さらに家族にまでうつるので非常に厄介だ。実はひと月程ひどい下痢が続いたのでベトナムの病院で検査を受けたのだが、結果に安心できなかったため日本の病院で再度診断を受けるべく一時帰国をした。そんな時でもスーツケースの中にはおなじみの釣りセットを忍ばせてある。

今回はターゲットをナマズに絞って道具を用意した。日曜日の朝に日本に到着し実家に荷物を置いて、早速明るいうちからポイント探しに多摩川に向かった。新規開拓をして今後のナマズ釣りの攻略範囲を広げたいからだ。めぼしいポイントは入水して深さや底の感じを確かめる。前回の一時帰国で購入したサンダルが今回も大活躍だ。多摩川で他のアングラーとバッティングすることは過去に数えるほどしかなかったのだが、今回開拓するエリアはバスねらいのアングラーがテトラに沿ってずらっと並んでいる。相当プレッシャーが高そうだ。ついでにスモールマウスバスの着き場を探そうと瀬に向かうとここにもアングラーが立込んでいた。瀬の周辺に反転流がおきて、ナマズが釣れそうなポイントになっている。一回りして夕方戻ってみると、三人のアングラーがケミホタルをつけたトップルアーを投げこんでいた。やっぱり、狙う場所は皆同じだよなぁ。

一旦自宅に戻り夕食を食べ、再び釣り場に戻る。目指すは昼のうちに目星をつけた中洲だ。夜十時を回っているのに、まばらにヘッドライトの明かりが見える。ナマズ師もここ数年で随分と増えたもんだ。メディアへの露出と相まって、都心でも近所の川でそれもトップウォーターで狙えるターゲットだから手軽に楽しいことが理由だろう。中洲で釣りをしているお兄さんに声をかけてみる。やはり一級ポイントと踏んでいたポイントで一本釣れたようだ。早速チェックしてみると、パパンっといきなりバイトが出た!しかし乗らず。さらにもう一度追い食いをしてきたがそれ以上続かなかった。非常に渋いコンディションだ。

終電間際になってポイントを大きく移動することを決断する。目指すは前回もチェックした多摩川水系の小川。今回は上流ポイントを開拓してみる。15年以上も前に、初めて東京で鯉を釣ったポイントだ。その日は中学校の夏の期末試験のため徹夜で勉強をしていた。集中が続くわけもなく、図工の授業でもらった木片を削りポッパー型のルアーを勉強をサボって作っていたものが試験当日の早朝に完成した。あまりにも眠たいため、眠気覚ましにとそのルアーを持ってスイムテストをしようと川に向かった。はっきり言って駄作であったが、何を思ったかビッグカープがそいつを吸い込み、死闘の末70cmオーバーを取り込んだのだ。試験に間に合うように走って登校したことを覚えている。

さて小川に到着して早速の一投目。まずはお約束だが、岸辺に立つ前に足元に隠れているかもしれないナマズを狙う。着水と同時に、パシュッと捕食音が聞こえる。おおっ、いたっ!残念ながらヒットせず。気を取り直して岸際に敷き詰められた岩の真横をジッターバグで引き通す。度々バイトが出るので非常にエキサイティングだ。しかし、一向にヒットさせられない。結局夜明けまで粘ったが、ナマズは十何回もの空バイトのみだが、モスキートバイトは食わせっぱなし、何十箇所の刺された跡をかきむしりながらストレスの塊と化して帰宅した。

その晩もリベンジのため再び小川に参上。すると向こう岸で不良男女がビニールシートを敷き、宴会を始めるようだ。これはナマズ師にとって非常に厄介なパターン。場荒れもそうだが、何せポイントに立ち入れない。いずれ退散するだろうと考え、まずはこちらの岸を攻めていく。昨日と同じく度々バイトが出るのは楽しいが、一向にフッキングする気配がない。攻めるポイントがなくなり頃合いを見て反対岸に渡った。2時間ほど経ちそろそろ宴会もお開きかと思った頃、ポツポツと大粒の雨が降り出した。しめしめと思ったのもつかの間、雨足は急速に勢いを強め、岸はみるみるうちに水溜まりになり靴がぐちゃぐちゃになってしまった。ひとまず橋の下に逃げ込み雨が収まるのを待つ。そうこうしているうちに不良グループは撤収していた。雨合羽を着込んで不良グループのいたポイントに入る。またバイトが出るもパシュッと虚しく雨音にかき消された。

あれだけ激しかった雨は、嘘のようにピタリと止んだ。しかし徐々に川の流れが早まってきた。だんだんフックにゴミがひっかかるようになり、増水してきているのが明らかだ。それと同時に捕食音があちらこちらから聞こえるようになった。流れが変化しナマズの活性が一気に高まっているようだ。ジッターバグを反対岸ギリギリにフリップキャストで落としていく。今日は昨日のタックルを見直し2500cを使用している。アンタレスDCではどうもショートキャストがやりにくかったからだ。スプールが重いからだろう。反面今日は非常に快適に釣りが出来ている。雨後で高活性になったのなら、朝まで楽しめるかもと考えていた時、着水と同時に竿がブルブルと震えた。落ちパクで喰ってきたようだ。ほとんど引きを感じないがようやくヒットした一本を丁寧に陸に抜き上げる。釣れたナマズは40cmに満たないスーパースモールサイズだが、努力が報われた会心の一本に一人ガッツポーズ。このサイズ、どうりでフッキングしないわけだ。ようやく解明できた。その直後にも針に一瞬かかるバイトが出た。活性の高さを肌で感じるほどの変化だ。しかし、川の流れはどんどん速度を増し、いつの間にか激流となった。水深はもともと浅いが、万が一滑って落水したら流され、命が危ないかもしれないほどの流速だ。終電も間近となり、ここで撤退を決めた。

翌日、ネットでテレメーターの水位をチェックして平常に戻っていることが確認できたので、再度夜の小川に降り立った。昨日十分いい思いができたので、今日は別のポイントを開拓することにした。それは我が母校の目の前。川幅が少し広くなっており、通学途中に川を覗くとコイがよく溜まっていた場所だ。小さな堰があり、雨後のナマズの気配満点だ。まずは流れ出しの脇の反転流を攻める。いきなりバイトが出るも惜しくも乗らない。次に流れに乗せて堰下で餌を待ち構えるナマズを狙う。またバイトをもらうがどうしてもノリが悪い。やっぱりサイズが小さいのだろう。ここでアンダーウォーターを試すためスピナーベイトを結ぶ。中学生の頃から雨後のナマズには決まってスピナーベイトが効くと仲間で話題だった。しかしバイトはない。次に新たにタックルベリーで仕入れたワンダーを試してみる。前回タフコンディションのバラを仕留めたので、釣れるイメージがついている。抵抗がほとんどない巻き心地ははじめ違和感があるが、バイトは明確に出るためハマると好きになるルアーだ。数投目、ブルブルとあたり、昨日に引き続きミニサイズが釣れてきた。この小川は全体的にサイズが小さいのだろう。

その後、ルアーをジッターに戻して岸際をひと通り攻めたところ、複数回の空バイトがあり、なんとか追加の一本をゲットできた。これまたスモールサイズ。過去にここまで小さいサイズが釣れ続いたことがなかったので、アベレージが小さいことはこの地域の特徴だろう。ナマズの生態研究で言われているように産卵できるサイズに成長した魚は本流に移動するのだと思う。また下流にある複数の堰も産卵時に遡上するナマズの量を制限するのではなかろうか。前回訪れた数キロ下流のポイントで会った青年アングラーの話だと、下流の平均サイズはもう少し大きめのようだった。今回三日間の釣行ではサイズは出ないもののナマズ釣りの醍醐味である、出るけど乗らないもどかしさを堪能できた。ここまで悔しく、熱くなれるゲームはナマズ特有だ。また、15年ぶりに母校の前で釣りをして懐かしい気持ちになったこと、その間変わらずに自然が保たれていたことが嬉しいノスタルジックな釣行となった。また一番肝心の病院の検査は至って良好、心配無用ということだった。これだけ楽しく釣りが出来れば、病気だって治ってしまうぜ。

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