2016年8月
タイのチャドー遠征を明日に控え、気持ちは高まるばかりだ。今回は果たしてどのようなドラマが待ち受けているのだろうか。この抑えきれない興奮を指に乗せて、今日はルアー釣りの魅力について思うことを叩き連ねてみたい。エサ釣りもしたことがなかったのに、なぜルアーから釣りの世界の扉を開けたのか、少年時代を振り返ってみる。
きっかけは「川のぬし釣り2」だ。私が小学4年生の秋、2年生の弟が同級生に借してもらったスーパーファミコンのソフトだ。IT化が進んだ現在の世代からは想像できないことがたくさんあるが、当時は小学校から家に帰ると決まって兄弟姉妹が友達の家に集まってファミコンをすることが全国の小学生の楽しみだった。
「川のぬし釣り2」は渓流の田舎村を出発し、下流の川や湖を冒険しながら様々な魚を釣り、伝説のぬしを探すゲームなのだが、釣り手帳というものがあり、初めての魚を釣るたびにページが増えていくので、たくさんの魚について知る機会となった。魚の名前はもちろん、食性や生息環境なども簡単に覚えた。そして、ゲームを進めるにつれて魚を売ったお金で釣り道具を揃えていく中で、ルアーというオモチャみたいなエサに興味を持った。オモチャで本当に魚が釣れるのか?と。
当時、世は空前のバス釣りバブルだった。羽振りよくゴールデンタイムに釣りのテレビ番組が放映されていた。上州屋がスポンサーの「千夜釣行」という番組が好きになり、テレビにかじりついて見ていた。イカしたサングラスをかけて出演していた男の名前はKEN SUZUKI。常にサングラスをかけていたし、英語の名前だから外人さんか、カッコイイなと思っていた。のちに上州屋創始者の息子さんだったことが分かったのだが、大人の事情など知る由もなかった。
KENは何本ものハイテクなタックルを載せたバスボートで湖を凄いスピードで縦横無尽に跳び回り、オモチャ箱のようなルアーボックスから一つをラインに結び、器用にポイントにキャストし、魚をかける。決めゼリフの「フィッシュオン!」が夢の中で何度もリピートされた。少年なら誰だって憧れるはずだ。ブラックバスを釣ってみたい、という衝動が湧き上がった。
正月を迎え、新年初売りの一番でっかい新聞折り込みとお年玉を握りしめ、父に車で連れて行ってもらった上州屋。チラシに大きく赤丸をつけて、買うものはすでに決まっていた。戦隊ヒーローのように私がレッド、弟がブルーの色違いで5000円のベイトリールとロッドのセットを手に入れたあの日が、大冒険の始まりだった。
バックラッシュはするわ、ラインがスプールの溝に噛むわで、初心者には全く使い物にならなかったベイトタックルだが、スポーツカーのように惚れてしまってはしょうがない。カッコいい、面白そう、という本当に単純だけど純粋な気持ちは20年以上経った今も変わらず。だから明日もぬしを求めて冒険に出かけるのだろう。
コメントはまだありません