ベトナム釣行記「タイ・チャドー遠征②:初日」

2016年9月初旬


 ポイントまでの移動途中に高津さんに私のルアーボックスを見てもらう。トップでボコボコ、ウハウハの希望とは裏腹に、事前情報のとおり潜るルアーが今回要となるようだ。オススメとしてアンダー用にコンバットクランクと、持参のものよりも大きいCDマグナム、トップ用にプロペラ仕様のスキッターポップ改をお貸しいただいた。


 Barraを営む高津さんはタイに移住されて18年、バラマンディもチャドーも数々の大物を仕留めてきた大々ベテランのガイドだ。その経験に基づいた様々なアドバイスをくれた。チャドーは孵化した稚魚をオスがある程度大きくなるまで側に付いてプレデターから子を守る、というなんとも育メンな生態をもつ。今回妻子をベトナムに置いて、タイまで遠征釣行に来てしまった私とは恥ずかしながら正反対だ。


 メインとなる釣り方は、稚魚ボールをサイトで見つけてはひたすら叩いていくようだ。そのうち堪りかねた親チャドーが怒ってルアーにアタックするらしい。話によるとメスのチャドーも稚魚ボールについて行動しており、うまく狙えばオスよりさらに大きなママを釣ることもできるとか。ランダムのキャスティングでは、ほとんどヒットは望めないということなので、ボートを走らせひたすらボールをサーチする。


 しばらくして岸際の立木群に待望のボールを発見。まずはお借りしたスキッターポップ改をボールの奥へ投げ込んで早巻きする。するといきなり5、6匹の稚魚が群がりながらアタックを仕掛けてきた。うまく針がかかり、開始早々チャドーをゲットした。姿はまだまだ子供だが、いきなりの本命ボウズ逃れで大物への期待が高まった。


 ボールはルアーを打ち込むたびに一旦沈むのだが、しばらくすると再び付近にワラワラと浮かび上がってくる。雷魚は魚類でも珍しく空気呼吸をするためだが、話によると本当はエラ呼吸だけでも生きていけるらしい。確かに当日はほとんど呼吸を確認することができなかった。ボールはまるでゴンズイ玉のように稚魚が折り重なり水面を移動する。ボールの移動パターンによって、直下の親チャドーが釣れるかどうか大体予想が付くらしい。すぐに逃げていくような場合は、親が釣られてしまった後などで留守なんだとか。


 一つ目のボールは、どうやら親チャドーが不在のようで、再浮上するたびにどんどん離れていってしまう。船頭は追跡に必死で頑張ってくれている。それにしても立木の裏などキャストで狙いにくいポイントに毎度のように現れるので、高津さん曰く、釣り人から身を守っているそうだ。それほどチャドーは賢い。確かに非常に警戒している様子だった。結局トップでもアンダーでもビッグバイトは得られず、次を探すことになった。


 続いて二つ目のボールを細いワンドの一番奥で見つけた。同じようにトップで誘うも、チビからしか反応は得られない。このボールはこちらの意図を分かっているのか岸際に仕掛けてある漁網の囲いの中に居座っていたため、船からはアンダーのルアーを一切投げることができなかった。ボールは頑なにそこに居座り離れようとしなかったため移動となった。


 続いて三つ目のボールはトップでもアンダーで攻めても親チャドーは留守のようだったので、アライくんタックルで少し遊んでみることにした。バスベイトではノリが悪く、小型ペンシルベイト、ポッパー、スイッシャーとトップルアーを順に試したが、結局小型ミノーのフッキング率が一番高かった。喰いに来るというよりも仲間と思ってじゃれてついてきている、そんな印象も受けた。意外なことにスイッシャーには無反応だった。 

ここで休憩。船上でランチボックスに入ったタイフード定番のガパオ(ひき肉バジル炒め)を昼食にいただいた。私の大好物! 午後はプラー・チョンの釣り方を教わった。ベトナムでも一般的で食卓にもならぶ小型の雷魚のことだ。水没した陸上の草が見え隠れするような岸際にバズベイトを放り込んでいく釣りが効果的なよう。私にはチャドーの着き場との違いがわからなかったが、一度ポチョッと弱いバイトがあった。おそらくプラー・チョンのバイトだったのではと思う。小型のチャドーかもしれないが、アタックは一度のみで沈黙した。


 日が傾きはじめた頃、四つ目のボールに遭遇した。すかさずトップ担当の私がバズベイトで水面をかき回し、アンダー担当の高津さんはクランクで稚魚を蹴散らす。それぞれトップとアンダーで撃ちまくるがバイトはない。私はまたアライくんタックルを交えて稚魚をイジメつつしばらく攻めていたが、どうもこのボールは定位置からほとんど移動しない。散々ルアーを取っ替え引っ換えしたので、これ以上トップで攻めても喰わない気がした。「そろそろ親チャドーも我慢の限界かもしれないですよ」とクランクを投げ続ける高津さんが言うのを聞いて、シャッドッラップ9をモレーナのタックルにセットし、リールのクラッチボタンに親指を乗せて湖面のざわつきを待ち構えた。 

次のボール浮上直後のタイミングに合わせた一投目、入魂のキャストはシャッドラップの飛行姿勢を保ちながらゆるやかな弧を描き、ボールのど真ん中を5メートルほど超えて着水した。ハンドルを数回転させボールを抜けるあたりにさしかかったところで、「ガツン!」といきなり手に衝撃が走る!にわかに信じられなかったが、ついにヒットした!ガンガンとした固い引きは明らかにチャドーだ!それに間違っても先ほどまでのチビスケ共とは別格だ!


 高津さんが追い合わせの指示を出す!竿先が絞り込まれ緊張が最高潮に達する中、チャドーはいっぱいに締めたドラグを引き出して深みに突っ込む。絶対に獲ってやるという気合だけでリールを巻き上げた。舟べりまで寄ってからも右へ左へエラ洗いで飛び回る。「焦らず弱らせて!」という高津さんの言葉に少しばかりの落ち着きを取り戻し、ロッドを水中に突っ込んで引きに耐えた。船頭からネットを受け取った高津さんが魚の浮上を待ち構える。そして最後はおとなしくなったチャドーがきっちり頭からネットに収まった。


 「よっしゃあああ!」、衝動的に拳を空に突きあげた。4lbオーバーのチャドーと決して大きくはないが、この感動は何ものにも変えられないスーパーヘビー級だ。高津さんとがっちりと握手を交わした。


 4時過ぎには早めの納竿。この日はそのワンチャンスのみで、他の3名はノーキャッチだった。握手した時、釣らせることができたというガイドとしての安堵の笑顔と、釣られて悔しそうな表情が若干見え隠れした、お茶目なガイドの高津さんに感謝しております(笑)。ありがとうございました!


 ※ 余談だが今回同行したガイドの高津さんには、「あなた、ガイドでしょっ」と思わずツッコミたくなるところがたくさんあった。例えば稚魚ボールに我先にルアーを投げ込んだり。ボールはせめてお客の私に先に撃たせて欲しい。私も釣りキチだから釣りたいその気持ちは共感できるが、1日に1本取れるかどうか、大金を払っておきながら、そんな貴重な魚をガイドに釣られてしまったら泣くに泣けない。

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